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制作プロジェクトHaLoを主宰するayakoが、音楽、写真などHaLoとしての活動について、また、mac、旅、映画、本、猫、食べ物、気になったニュースなどについて、徒然に綴ってます。


by ayako_HaLo
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『言葉が通じてこそ、友だちになれる〜韓国語を学んで』茨木のり子 金裕鴻

初めてパスポートを作ったのは小学校の6年生の時だった。佐賀市の若楠少年少女合唱団の公演で韓国の釜山市を訪れた。飛行機に乗って一時間半ほど。あっという間に初めての異国に到着した。あちらの少年少女合唱団との合同のコンサートで一緒に「アリラン」を歌った。意味は全く分からなかったけれど。

「こんにちは」「ありがとうございます」「トイレはどこですか」
事前に覚えて行った言葉はこれだけ。よっぽど唱えたんだろうと思う。今でもこの三つは言える(通じるかどうかは別にしてw )。たったこれだけの言葉しか分からないのに、釜山の合唱団の団員との交流は心に残り、二日間の予定を終えて別れる時には、別れを惜しんで全員がぼろぼろ泣いていた。小学生には言葉が必要なかったのかもしれない。

バスのガイドについた朴(ぱく)さんという女性の日本語がとてもうまかったのを覚えている。そして、日本のことを良く思っていない人たちも中にはいるから、バスの外で日本語で話をしない方がいい、なんてことを誰に言われたのか覚えていないけど、言われたことも覚えている。小学生の私は「何故外で日本語を話さない方がいいのか」ということはたぶん全然分かっておらず、また旅程の全てが団体行動で全く自由時間もなかったので、ガイドの朴さんと合唱団の関係者以外とは何のふれ合いもなかった。

ホントに子供だったのでこの釜山公演のいきさつも、何故一度だけ行われたのかも知らない。ただ、子供の私の心に、とても近いところにある国で、何だか日本語を話すことは問題がありそうだ、ということを植え付けた。そして、それ以来、行きたいと言う思いはありつつ、その後まだ足を踏み入れていない土地の一つ。大人になってから、侵略したり日本語の強要を行った歴史があることなど日本語の問題も理解し始めた。

"yellow"を制作する時に、アジアの人たち、中国、韓国の人たちと何らかの関わりのあることを収録したい、という思いがあって模索している時に茨木のり子さんの訳された『韓国現代詩選』(花神社)に出会った。結局"yellow"にはこの本に収められている「つつじ」という姜(カン) 恩喬(ウンギョ)さんの詩(を茨木さんが日本語に訳されたもの)に曲をつけさせてもらって収録した。「タルレタルレチンダルレ」と茨木さんが原語のままカタカナで残された部分もとても美しい。(今、姜恩喬さんについて検索をしてみたら、「林」という詩を載せているこのページを発見。彼女が釜山東亜大学校で教授をされていることがわかった。これまで連絡が取れなくて、"yellow"のCDを送れていなかったので、再度トライしてみるつもり。インターネット凄い!)

恐ろしく前置きが長くなったけれど、今日書こうと思ったのは『言葉が通じてこそ、友だちになれる〜韓国語を学んで』について。茨木のり子さんと金裕鴻さん(ハングル講座の先生。50歳になってから韓国語の勉強を始められた茨木さんの先生)の対談という形で進むこの本。とても読みやすく、更に韓国は近くにあるのに自分がホイホイと気安く出かけられずにいる理由も再確認できた。過去にあったことに対する情報認識の差と言葉。韓国を日本が侵略した歴史について自分が知っているとまだ思えないのだと思う。小学生の時に植え付けられた韓国で日本語を話すことへのトラウマもあるかもしれないと、今思い至った。言葉の方も小学生の時に学んだ三つの言葉から進歩していないし。いつか韓国語も学びたいと思う。

学びたい言葉はたくさんある。つまり、友だちになりたい人たちがたくさんいる。あぁ、語学の天才だったら良かったのになぁ。

この本は日本と韓国の文化、「あたりまえ」の違いなどにも話が渡っていてとても興味深かった。自分の中に韓国的な開放的な部分も発見したし、やっぱり日本人だ、と再認識した部分も。「パンガプスハムニダ(会えて嬉しいです)」「ケンチャナヨ(構いません。いい加減でも大丈夫みたいな意味?)」も素敵な言葉。

お互いを知らないことには仲良く出来ない。今はマスメディアなどを通じた情報が先にたくさん届くから、知らないのにちょっとだけ知っている気になってしまうのが怖い。仲良くなってから一緒に遊びに出かけようとする日本人と、良く知らないから仲良くなる為に一緒に遊びに出かけようとする韓国人。私ももしかしたら、まずは出かけてみることが大切なのかもしれないと思う。行ってみてからもっと韓国語/韓国について知ったらいいのかもしれない…。

反日の報道に対して、そこの部分だけが大きく報道されすぎているのではないか、という気がしている今日この頃。日本の国内で火炎瓶だの銃弾だの過激に反応している人たちが、大多数を代表していないのと同じように。数がかなり多いことは心配だし、日本人は元々過激に反応する人たちではないから、心の中に少しずつ降り積もって行く嫌悪感の方が怖いのだけれど。
もっと知りたい。仲良くなりたい。
by ayako_HaLo | 2005-04-22 19:12 | books