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制作プロジェクトHaLoを主宰するayakoが、音楽、写真などHaLoとしての活動について、また、mac、旅、映画、本、猫、食べ物、気になったニュースなどについて、徒然に綴ってます。


by ayako_HaLo
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谷川俊太郎 X 海部宣男トークショー@日本科学未来館(台場)

海部宣男さんというのは、現国立天文台台長。ハワイ島マウナケア山頂にある「すばる」望遠鏡を始め数々の大型望遠鏡プロジェクトに参画。このトークショーに行くまでは知らなかったけれど。150人定員のMiraikanの中の会場は吹き抜けの高い天井のホールだった。始まる30分前についた時に既に三分の一ほど人で埋まっており、始まった時にはいっぱいになっていたと思う。

映画にしても本にしても音楽にしても、そのもの自体は全く同じであっても接した時の自分の心の状態、自分の興味の対象によって聞こえてくるもの、響いて来るものは全然違ってくる。トークショーにしても同じこと。同じ話を聞いた150人の心の中に響いた話は150通りあるはず。

私にとって今回は、宇宙観、生死という話に一番惹かれたように思う。備忘録として書きとめておこうと思う。

谷川さんの詩「20億光年の孤独」の朗読でトークショーは始まった。
何故この詩の中では20億光年なのか。谷川さんがこの詩を書いた当時19才くらいの頃(1950年代)は、宇宙の大きさが20億光年と言われていたから。その後宇宙が膨張していること、当時の計測方法に間違いがあったことなどを経、200億光年と言われていた時期もあったりしたが、現在では137億光年±2億光年くらい、という結論が出ているそうだ。

海部さんがハワイの「すばる望遠鏡」で撮影したものすごい数の星雲の写真を見せてくれた。ぱっと見ただけでは星空の写真のようだったけれども、その星雲の写真は30分露光x3回の写真を合わせて作ったのだそうだ。その中に126(だったかな?)億光年離れた星雲の写真があり、赤い光を放っていた。美しい写真だった。

谷川さんが、宇宙には「果て」があるのか?という質問をした。海部さんは、「そもそも「宇宙」というものが人間の概念でしかない。認識されたものの全てが宇宙なのである。だから「果て」とは言えないし、分からないとしか言えない。」と言う。また「素粒子の中に閉じ込められた次元が10次元とも11次元とも言われ始めている。今現在人間が認識している3次元に時間を足した4次元というのは、見せかけに過ぎないのかも知れない」という話も面白かった。私には認識できない世界のなんと膨大なことか。結局「宇宙の中心は『私』なのである。」という海部さんの言葉も普段から感じていたことだっただけに、うん、そうか、という感じ。

谷川さんがいくつかの詩を朗読してくれる。外国は遠い存在だけれども、宇宙は鼻の先にあるという感覚を書いた詩、夜は果てしなく「見えてしまう」ものを神様が青空を使って昼間は隠してくれている、という感覚を書いた詩。「星空を眺めていると自分を超えたものを感じる、それが宗教を生み出したのではないか。人は畏れに対して祈るのだ。」

海部さんは「今の都会に住むことどもたちは満天の星を見たことがない。都会にいると天の川が見えない。だから『天の川を見よう運動』を行っている」んだそうだ。昔は誰からも教えられなくても自然にやっていたことも、今は機会をわざわざ設けないと触れることのできないたくさんの子供たち。これは今後も加速して行くしかない。遊びも星も…。

海部さんは「人間が自然そのもの」と言った。人間が自然を壊している、という見方もあるけど、その人間自体が自然そのものなのだと考えると愚行も受け入れるしかないのだろうか。先進国、特に日本で子供がどんどん減っていること、これも自然の動きなのかもしれない。その一方で京都議定書を発効して何とか温暖化に対抗しようとしている人間の営みもまた自然の一部。自分の心に正しい/気持ちいいことを続けるしかないんだろうと思う。

参加申し込みをした人たちから二人への質問1 「人間の存在理由は何か?」

谷川「存在の理由はない。繊細な深い強い力によるもの。人間の言葉では言い表せないもの。今、ここにいることをいかに楽しむかなのでは。ダライラマは『人生の目的は幸せになることだ』と言っている。」

海部「安らか、幸福になること。私が何故ここにいるのかを考えるとたくさんの偶然、たくさんの出会いによるものであることがわかる。網の目のような偶然、因縁によるのだ。自然の中の法則と偶然により、私(と同じ者)は二人といない。私は私である。」

谷川「ある子供が言った言葉が印象的。「僕はお母さんを喜ばせる為に生まれて来たんだよ」時に子供の方に真実が見えている時がある。」

質問2 「孤独とは寄り添うものか、立ち向かうものか?」

谷川「マイナスの体験をしているとき、余裕があればその体験を「味わう」ことが出来たら、それは喜びに通じる。」 確かにそう思う。「味わう」というのは素敵な感覚だと思う。私はこれまでマイナスの体験にぶつかった時に『学びの機会』だと思って来たけど、「味わう」方が素敵だ。

谷川「鬱っぽい時の方が感情が豊かな場合もある。」これも同じかもしれない。味わえる余裕があったら素敵だ。(でもこれは、最近自分が「元気」だからそう感じられるだけのような気もするな。)

質問3「宇宙人はいると思いますか?」

海部「宇宙には生命は嫌というほどある。アンドロメダ星雲の中の恒星10分の1には惑星がある、ということが分かっている。地球なんてそんなに特別なものじゃない。また宇宙には「水」が氷の状態でいくらでもあることも分かっている。また有機物もたくさんある。生き物が生まれていないと考える方が難しい状態。『人間』という宇宙人がバクテリアのような状態からどのように生まれ育って来たかを知りたい。」

谷川「人間の内面の宇宙を見て行くと果てしないもので、全部を見ることは出来ない。宇宙人がいたら、人間の意識が変わるのでは。生命体がある、ということがわかるだけでも意識が少し変わるのではと思う。火星に行って来た/交信した、というような人が時々いて、全面的に信じる訳ではないけれども興味はあって、意識のトリップとして違う次元の中であるのかもしれないなどと思う。」

最後に、谷川さんが星座、星の配置を人が生まれてからの感覚にお置き換えた詩を朗読してくれた。「生まれてから繋がりは増え続けるだけ。例え命が絶えてもそこに生まれた繋がりは消えることがない。誰かのところに生き続ける。」というメッセージを私は受け取った。繋がりの中に誰もが生き続ける。素敵な感覚だ。

海部さんから谷川さんに「アストロノミカルトイレットペーパー」のプレゼント。若い天文学関係の人たちの中に夜、望遠鏡を担いで適当な山手線などの駅で下り、駅前に数分で望遠鏡を組み立て、そこいらを通る通りすがりの人たちに望遠鏡を使って星を見てもらう、という活動をしている人たちがいるらしい。30人に見てもらえたら「征服。」として、次の駅に移動するとか。面白いなぁ。その人たちはいろいろなグッズも作っていて、このトイレットペーパーもその一つ。市販はしていないらしいが、宇宙のいろいろなことがプリントしてあるトイレットペーパーらしい。見てみたい。

私は、今(恐らく)考えられている宇宙人(まぁそれでもいるかも知れないと思うけど)、ではなく、地球上に存在する生命体とは全く違う環境を必要とするような高度な生命体が既に存在するんじゃないか/したら面白いな、とず〜っと思っている。スタート地点の必要概念が違えば、その結果生まれてくる生物の形にしても生体にしても全く想像のつかないものになるはず。もしかしたら私たちには見えないのかもしれないし…。こんなことを想像するのは楽しい。
by ayako_HaLo | 2005-03-19 16:56 | friends