『ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー 』森 達也 著
2005年 04月 26日
彼自身がこの話に興味を持ち、調べ、映像でのドキュメンタリー作品にすることをあきらめ、本として成立させる過程、というドキュメントの部分と、クォン・デの生きた時代に目線を移しての「歴史読み物」として書かれている。
彼と同じく、全くクォン・デのことを知らなかった私は「またか…」と思いながら読み進めた。「またか」というのは、世界のあちこちに旅をする度に、「私たちの国で過去に日本はこんなことをしたんだけれども、知っているか」と幾度も問われ、その度に「知らない」ということに愕然として来たこと。何故、私はこれほど知らないのか。私の不勉強は第一に認めた上で、やはり「学校ではちゃんと教わらなかった」んだと思う。歴史の授業は小学校、中学、高校ともに前石器時代から始まり、近現代はほとんど時間切れのようにして終わったように記憶している。それは、今考えると意図的だったのか、とさえ思ってしまう。外に出た時に、知らないことでいつも恥ずかしい思いをしているので、ベトナムにはまだ足を踏み入れていないけれども、知らずに行ったら、またあの思いをするところだった、と思っていた。
読み進めるうちに、私は過去に犬養道子著の『花々と星々と』だか、『ある歴史の娘』だかの中でクォン・デにごく簡単に出会っていながら記憶にとどめておくことが出来なかったことも知る。(自分の記憶力のヒドさにもあきれる。やっぱり脳欠損だ)
森達也がクォン・デを知る旅は、そのまま私がクォン・デに出会う旅にもなった。フランスからの独立を夢見、日本にあこがれ、日本に掛けて、危険を冒してまでも日本にやって来たのに、大戦に突入して行くその日本に翻弄されるクォン・デ。
ある意味、ドキドキして歴史読み物を読み、ドキュメントを読んでいたとき、最後にまたショッキングな事実が。
あはは。何か宣伝みたい。
私が、つまり森達也がショッキングと思ったことを、他の人もショッキングに捉えるかどうか分からないけど、面白かった。クォン・デにも再度出会えて良かった。今度は私もこの名前を記憶にとどめておきたい。「知らない」ということは恐ろしきことなり。興味ある人は是非。『ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー 』