人気ブログランキング | 話題のタグを見る

制作プロジェクトHaLoを主宰するayakoが、音楽、写真などHaLoとしての活動について、また、mac、旅、映画、本、猫、食べ物、気になったニュースなどについて、徒然に綴ってます。


by ayako_HaLo
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

映画『日本のいちばん長い日』

池袋の新文芸坐でやっていた岡本喜八監督特集に行って来た。同時上映は『肉弾』(1968)。日曜日を避けて月曜日に行ったのに、座席は半分から三分の二ほど埋まっていた。年配のおじいたちに混じって若い人たちもちらほらって感じ。

先に『肉弾』を見た。若い日本軍兵士が上官によって「豚」扱いされたあと、肉弾(地上戦になったときに爆弾を抱えて戦車の下に潜り込み爆破する)になることを命令された事により「神」になり、更に魚雷一本にドラム缶というセットで魚雷を敵艦に打ち込む命令を受けて海に浮かんでいる間に思い返す様々なことが描かれている。

使われている音楽のせいもあって、どこかコミカル。いや、冷静に考えたら絶対に負ける事が分かっているあの状況で、負けるなんて言わせてもらえなかったり、肉弾や魚雷弾になる命令を出されたりっていうのは悲喜劇なんだと思った。

そして『日本のいちばん長い日』(1967)。大宅壮一原作の同名原作の映画化。ポツダム宣言を受諾する事を決めてから、敗戦を知らせる天皇の「玉音放送」が実際に放送されるまでの24時間を描く。陸海軍の暴走があったり、敗戦を知りながら特攻に出る兵士を見送る上官と何も知らない地元の人たちの姿があったり、閣議、御前会議の右往左往。

変なところにも目がいった。あの放送は皇居内でSP盤に録音されたものの放送だったんだ。「正」と「副」のバックアップ体制があったり同時に複数の人が盤の上に針を落とす録音作業。これはSPの録音現場を見た事がないから、新鮮だった。まぁ、NHKの総力を挙げたトップの機材が集まってたってことなんだろうな。

天皇役の人は実際に映画の中に存在するんだけど、どのカットも誰か別の人の陰になってるとか、ついたての陰に手足だけ見えるとか、菊の御紋付きの椅子の後ろから後頭部だけ映すとか、とにかく正面切って彼が映っているシーンが一つもない。天皇役の人が正面から映る事はタブーなの?どの部分が「ダメ」なんだろう。例えば伊勢神宮の階段から上や熱田神宮の中は撮影が禁止されていたり、そういうことの延長? 「良くわからない」=「神聖」の図式を作ること? 今の天皇は確かにカメラの前に姿を現すけど、外国のメディアも含め彼らに直接インタビューすることは御法度になっているようだし、何なんだろう。

映画の中で天皇が「これ以上国民が犠牲になるのは忍びない。自分が直接マイクの前に立って話す」と言った時に、ほぼ全閣僚が崩れ落ちるように涙する。そして鶴の一声「ご聖断」によってそれまで一億玉砕を唱えて来た陸相も一気に黙る。けれど直接言葉を聞いていない若い将校たちは、「天皇はひ弱な連中にそそのかされたのだ」と再決起を画策し、天皇を擁した「官軍」になろうとする。軍の中の上官からの命令は絶対。それが例え偽物であっても更にその上官からの命令を覆す命令が出るまでは動き続ける。どれも今の私からは違和感がある。

『肉弾』と同じ時期を描いたにもかかわらず、官邸の中も閣議を行う部屋の中も首相の家も陸相の家も物がそろっているし、みんな恐ろしくきちんとした身なりをしている。このギャップ。でも、きっとそうだったんだろう。一般市民が食うや食わず、牛になったり豚になったりぼろぞうきんみたいな服をまとって、むしろで寝たり野宿しているときに、国の決定を下していた人たちはきちんと食べ、きちんとしたものを身にまとい、布団に寝ていたんだ、きっと。

日本に於ける太平洋戦争での
兵士の死者100万人(成年男子の四人に一人)
民間の死者100万人

こんなバカなことを繰り返しちゃいけない。でも現に繰り返し続けているから、しのびない。

----------------

直接私もこの映画も関わりがある訳ではないけれど「九条の会」が有明コロシアム(一万人収容)で7月30日(土)に講演会を開くらしい。参加してみようと思っている。その告知と意見広告掲載のため現在「九条の会・有明講演会」のための意見広告へのご協力のお願いを出している。議論を尽くした上で、憲法の他の条文を改定するのは構わないんじゃないかと思うけれど、九条だけは別だと思う。そしてその声は上げなければ、またバカを見るのは私たち。

郵便振替口座番号=00130-1-760316   口座名=九条の会意見広告
 意見広告用電話(FAX兼用) 03-5213-8570

また、「九条を守ろう!映像プロジェクト[イメージ・サテライト] 」は「9 nine――憲法9条は訴える!」というドキュメンタリー映画も作成したようだ。500万円の制作費を一口1万円という形で事後出資してもらい、出資者にDVD1枚とVHS1本を送るので自由に上映会をしてほしいという仕組みらしい。都内どこかで上映会があるのを見つけたら知らせて欲しい。

9条の会のドキュメンタリー映画完成 出資者にDVDで
asahi.com文化面5月31日付け
by ayako_HaLo | 2005-06-01 10:55 | films/pics