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制作プロジェクトHaLoを主宰するayakoが、音楽、写真などHaLoとしての活動について、また、mac、旅、映画、本、猫、食べ物、気になったニュースなどについて、徒然に綴ってます。


by ayako_HaLo
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家の枠組みが立ち上がるー建て方

三省堂の大辞林を見ると、二つ目の定義に
【たてかた(建て方)】現場において構成材を組み立てること。木造建築では土台・柱・梁・小屋組を組み上げる棟上げまで
と書いてある。

穂高養生園で行われたセルフビルドのワークショップ第二回目(2006年5月26日〜28日)は、この「建て方」がメイン。遥か昔のことになりつつあるので、完全に忘れてしまわないうちに、少しだけメモを。

5月26日

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_12255653.jpgワークショップ一回目で造った「版築」の基礎の上に、栗の木の「土台」がボルトで止められ、その上に柱が立てられた。大工さんが使う「板図」(板に書いた図面)に従って縦横「い」「ろ」「は」…という番地と「一」「二」「三」…という番地の交わったところに立てる柱を探して運んで来る。柱によって寸法も違うし、ほぞやほぞ穴を刻んであるものが違うので、あらかじめ柱にそれぞれを記して作業が進めれていた。「いの一番」という言葉はここから来たもの。柱の上に乗るのが「梁(はり)」、そして「桁(けた)」。今回のコクーンハウスでは四つの面を直線に製材した材ではなく太鼓材という二面だけを落とした材を使用。材の持つ「弓なり」を利用する。梁として使うとき、山形に据えると、直線の材を使うよりも強度が上がるとか。カッコいいし、強度も上がっていいんだけど、こういう材を利用するってことはそれに伴う細かい作業(梁の上に乗っかる「束」の長さがいちいち違うのを計算したり、ほぞを彫る時に一旦平面を出したり…)が増えるってこともやってみてわかった。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_1663545.jpg梁の上に乗っかっている短い柱が「束(つか)」。そして束の上に乗っているのが「母屋(もや)」。母屋のうち屋根の一番高いところに当たるものを「棟木(むなぎ)」と呼ぶ。そんなわけで、この屋根の一番高いところの材を設置する作業を「上棟(じょうとう)」とか「棟上げ(むねあげ)」と呼ぶ。この写真ではまだ棟木はかかってない。写真の中で大きな木槌を二人が使っているけれど、この木槌を「掛矢(かけや)」と呼ぶ。「ほぞ」と「ほぞ穴」の関係は、入らないってのは論外だけど、緩すぎてもダメで、この掛矢を使ってがんがん叩いて入って行くくらいがちょうどいいんだってことも体験して分かった。森の中にカンカン響く掛矢の音が気持ちいい。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_12394115.jpgこの写真では既に棟木が乗っているんだけど、見えない(笑)。棟木から母屋に乗せて「垂木(たるき)」がかけられて行く。まだ骸骨みたいな状態。この状態で上に登ると下が丸見えで結構怖い。それでも大工さんとか木こりのトシェとかは慣れたもので、ほいほい飛び回る。さすが。私は力仕事の連続でもあるし、高いところで足手まといな気がして、すっかり撮影隊(笑)。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_12463534.jpg一段落したところで登ってみる。まだ骸骨だからちょっと怖いんだけど、垂木を棟木にビス止め中。かなり真剣。


5月27日

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_15185062.jpg垂木がかかったところで、今度は「野地板(のじいた)」を張る。今回は、野地板の屋内面がそのまま天井になるので「化粧野地板」という室内面が化粧板になっている材を釘で垂木に打ち付けて行く。化粧野地板には側面に「実/核(さね):(3)〔建〕 板と板とをはぎ合わせるとき、一方の板の側面につける細長い突出部。他方の板に細長い溝を作ってこれとかみ合わせる。さねほぞ。(大辞林より)」が作ってあって、これを噛み合わせながら打ち付けて行く。材の長さが足りなくて継ぐ時は、必ず垂木の上で。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_12513267.jpg今回は、屋根の上に土を上げて「草屋根」を造る関係からか野地板をもう一枚張る。低い方から高い方の棟木に向かって張って行く。屋根の上はかなりの大人数だったけれど、寸法を測る人、材を切る人、打ち付ける人、どんどん作業は進んで行く。既に一枚化粧野地板が張られているので、どこに垂木があるのかちゃんと確認出来ないので、垂木が通っている場所に一度「墨」を入れた。この方が安心。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_1520828.jpgこんな屋根の上でも電動「丸鋸(まるのこ)」を操る。屋根の形を整えているところ。書く順番が前後するけど、野地板を張る前に張りつけた「鼻隠し(はなかくし)」と「破風板(はふいた)」も見える。こういう名称がわかってから建物を見てみると、鼻隠しをしてない建物もあるなあ(寺社など)とか、破風板立派な板で張ってあるなあ、とか建物を見る目が少し変わった。この後、屋根の周りを「唐草(からくさ)」という金属(アルミかな)で囲む。唐草は短いビスで打ち付け、屋根にぴったり潰してくっつけていく。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_1521144.jpg前に書いた「唐草」っていうのは写真に示してある部分。野地板に屋根材を接着する為の、タールが主材料になっている接着剤を塗って行く。まんべんなく、そして乾きが早いように薄く塗ること。板の間に大量に落としてしまうと天井まで染みてしまう。塗り終えたら完全に乾くまでしばし休憩。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_1417484.jpg今回の屋根材は、ロールになっているこのシートを一枚貼るだけ。まずは屋根の形にカッターで切りそろえる。裏側は黒いタールのようなものがべたべたしていて、シールを剥がすように薄いビニールを剥がして屋根の上に固定して行く。裏側同士とか、タール材を塗った屋根に一度くっつくとかなりの粘着力。先に張る場所をきっちり決めてから半分ずつ裏紙を外す。雨じまいのことを考えて、屋根材は必ず低い方から張る。言われたら当たり前のことだけど、知らずに張ったら頂点から張ったりしそう〜。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_14232963.jpg屋根が張り終わったところで、筋交いを入れて行く。壁を塗る時の「木ずり」のことを考えて材の太さを決め、入れ込む材をカットする。これも掛矢で叩いてギリギリはめ込むような大きさにする。筋交いを入れられない玄関方向などは「仮筋(かりすじ)」と呼ばれるいずれ外してしまう細い筋交いを入れて構造を安定させておく。

5月28日

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_14274765.jpg下屋(げや)も一棟だけ建ててしまう。大辞林によると【下屋】とは「母屋(おもや)から差し出して作られた屋根。また、その下の空間。」とのこと。玄関前のポーチって感じかな。この写真では既に当たり前のように立っている丸太の柱は、前に伐採の様子を書いた唐松。基礎は敷石を敷いてあってその凸凹をスクライバーで柱の下面に書き移し、その部分をチェーンソーで削ってぴったり合うように加工されて立っている。お相撲さんが突っ張ったら倒れるかもしれないけど、私が押したくらいではびくともしない。ある意味では立ってるだけなんだけどね…。下屋の桁や梁は垂木の乗るこう配を考慮したり、仕口を「蟻落とし(蟻掛(ありかけ)とも言うらしい)」という形に刻みを入れたり、結構、色々やったんだけど、気づいたら写真を撮ってない。失敗。蟻ほぞは抜けにくくするためにほぞの奥の方が広く扇型になっているもの。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_14504383.jpg下屋にも垂木がかかって行く。今度もビス止め。かけた後で、必要な長さに墨を入れて、電動丸鋸が入るところまで切り目を入れ、残りを手ノコで落として行く。

家の枠組みが立ち上がるー建て方_b0024339_14584689.jpg鼻隠しと破風板を取り付ける。今回のワークショップはここまで。3棟全ての建て方が終わり、一棟だけ下屋も建てた。事前には雨が降る予報が出ていたので、全天候型で作業が出来るように、とブルーシートのテントの準備まで事前にしておいたけれど、結果的にはほとんど雨も降らず、気持ちのいい天気の中予定していた作業を全てこなすことができた。実際、今回の建て方や屋根張りっていうのは、雨が降っていたら出来ない作業で、お天道さまにも雨の神さまにも大感謝。今回のワークショップに参加したのは10人中、9人が男性で、女性は私一人。女性の参加者が他にいなかったのはたまたまだったのかもしれないけれど、特に構造を組み立てるところは「力仕事」の連続だった気がする。お疲れさま。

更に詳しいレポートは穂高養生園レポート2で。
by ayako_HaLo | 2006-07-21 16:01 | self-build